崩壊カウントダウン

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亜貴はどんな時も、私が髪型を変えたり、新しい服を着たりして、逢いに行けば、必ず何かしらの言葉をかけてくれていた気がする。あれは亜貴のお姉ちゃんの指導のたまものだったのかもしれない。 「着ようかなとは、思ってるけど……」 「そっか」 「どうして?」 「好きな人のために、綺麗にしてくるのかなって思って」 亜貴は頬を笑わせている。幼馴染の恋煩いを応援する優しい男の子のコメントだった。途切れそうになった呼吸で、痺れてしまいそうな指先を懸命に隠している。 「そう、だね」 「じゃあ、俺が迎えに行くよ」 「……ええ、どうして?」 「浴衣で一人歩きは危ないだろうし。俺たちと会った後に会うんでしょ?」 「うーん、そうなる、かなあ」 「梢の好きな相手より先に、俺が梢に会っちゃうのは悪いけど」 苦笑して、私を見つめている。その笑顔で私の心を突き刺せそうだ。 少しも恋愛対象にはなれていなかったと思う。まざまざと見せつけられて、ただ立ち尽くしていた。 「はは、でも亜貴に悪いよ」 「いいよ、どうせ近いし」 「でも」 「俺が一番先に、可愛くしてる梢見れられてラッキーだし」 躊躇いなく言って、私の頭を撫でる。 亜貴は背が高いから、単純に私の頭に手を乗せやすいのかもしれない。もうそれくらいに思っておかないと、何度傷ついたって足りない。 「ね、約束」 過保護なだけ。わかっているから、差し出された節くれ立った小指に、ゆっくりと自分の指を触れさせている。 「よし」 「本当に、お兄ちゃんなんだからなあ」 「はいはい。なんとでもどうぞ」
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