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花火大会の日に結ばれたカップルは、末永く幸せになれるのだという。
去年、大学からほど近い場に位置している神社の宮司から聞いた話だった。恋愛成就の神様が祀られている神社だから、花火大会の日は、男女のカップルで埋め尽くされる。
去年の私たちは、よくあんなイベントに足を運んだものだ。
「またたくさんいそうだね」
亜貴も同じことを考えているのだろうか。笑いながら言葉をかけられて、同意するように頷いた。
亜貴の歩幅は限界まで縮められている。
私と歩くための配慮だとわかっているから、たまらなく苦しくなる。亜貴のすばらしさを数えるたびに、苦しみで息が続かなくなってしまうのだ。
「あっくん、こず、遅い」
「そうちゃん、ごめんね。私が歩くの遅くて」
大学の正門前で待っていたらしい総司と朋美がぶんぶんとこちらに手を振っている。それに急く足で近づいて、軽く乱れた息を整えながら頭を下げた。
朋美は深い緑地に朝顔を咲かせた浴衣を着こなしていた。
背の高い朋美にはよく似合っている。
ジャージでも何でも綺麗に着こなせる朋美は、今日もばっちりと化粧を整えた、美しい顔立ちで私の名前を呼んだ。
「梢ちゃん! めっちゃかわいい!」
「え~、朋ちゃんのほうがかわいい。緑も似合うんだね。髪もいいね」
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