机下で触れる指先

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ごめんね、って言いながら、あのときあの男が触れた手首を、亜貴が撫でる。その感触だけで目が回ってしまいそうだった。 「なにそれ、嫉妬みたいだよ」 「あ、ほんとうだ。男の嫉妬、見苦しいなぁ」 本当に嫉妬してくれたのなら、どれだけ良いだろう。目を見て、亜貴が笑っているのを確認している。冗談だとわかってしまうから、なおさら苦しい。 「はは、亜貴って嫉妬なんか、するの?」 「え? なにそれ。現在進行形で、してるのに?」 「亜貴だっていつでも触れるし、呼び捨てだよ?」 ままごとみたいな掛け合いだ。亜貴が笑って、首を傾げた。 「俺だって大切に触って、何よりも大事に呼んでるのに、突然出てきた誰かに権利を侵害されるなんて許せないでしょ」 「なんか、法学部っぽい感じの言い方」 「それは梢も一緒でしょ」 おかしそうに笑っていた。愛するふりが上手な人だ。耐えられずに茶化していた。亜貴は全力で、恋人のようなままごとに取り組んでいる。 曖昧に触れる指先に壊れてしまいそうになる。 「俺以外に触らせちゃだめだよ」 「あき」 「梢のことだと、感情のコントロール、かなり下手になるの」 「もう、亜貴は言い方がいちいちずるい」
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