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「わ、」
携帯が鳴って、亜貴の指先があっけなく離れてしまう。さみしさで壊れてしまいそうな体を抱えて、亜貴がパンツのポケットから、携帯を取り出すのを見ている。
「総司だ」
この時間にかけてくる相手は、だいたい総司しか思い浮かばなかったから、小さく笑ってしまった。
亜貴は、私の表情をちらりと見て、それから携帯を耳に当てた。亜貴は、注意深く私を大切にしようとしていると思う。
「もしもし? うん」
総司と亜貴は、会話のペースが速いと思う。
私と三人でいるときはいつもゆっくり話しているくせに、二人になると少しだけ乱暴な感じになる。二人とも、もしかしたら私に気を使ってくれていたのかもしれない。
「今から? いや、今終わったとこだけど」
ちらりと私を見て、亜貴が眉を斜めにしたまま、立ち止まった。つられるように足を止めて、亜貴の横に戻る。私の表情を見て、「総司が今から来いって」と呟いた。
「今から?」
聞き返しているうちに、総司が「こず?」と呼んでいる音が微かに聞こえてしまった。亜貴が困った顔をしながら「出る?」と聞いてくる。
「朋美ちゃんと、一緒にいるみたいだけど……」
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