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亜貴は、私が総司のことを好きでいると思っている。そうでなければ、この関係は終わってしまう。だから、いつまでも私は、その問いかけに困った顔を作り続けなければならない。
「うん。そうちゃんと、話したい」
嘘でもないけれど、本心ではないような言葉を作った。
亜貴は小さく笑って、私の頭を撫ぜた。まるで、私を慰めるような指先だった。
亜貴は、傷ついているのだろうか。
バイト終わりにくたくたになって歩いていたら、幼馴染が、自分の好きな人と一緒にいるときに電話をかけてきて、これから会おうと声をかけてくる。
それはどれくらい苦しい現実だろう。
「総司? 梢に代わるからちょっと待って」
私の頭に手を置いたまま、片耳に携帯を押し付けている。2、3言話し終えたら、もう一度亜貴と目が合った。
声もなく、携帯を渡されて、受け取る。微かに触れる指先に痺れたくなって、眩暈をやり過ごした。
「そうちゃん?」
『こず? 今からご飯食べよ?』
「うん? 今どこかにいるの?」
携帯の奥から音が聞こえている。小さく、朋美が私の名を呼んだ音が聞こえてきた。
「朋ちゃん?」
『わぁ! 梢ちゃん? バイトお疲れ! 今二人でファミレスいるよ~』
「ふふ、ありがとう。ファミレス?」
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