机下で触れる指先

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「梢?」 「あ、うん。帰ろっか」 私も亜貴も、すでにへとへとだった。 しっかりとアルバイトをこなして、二人のマシンガントークに付き合って、途中、私が少しうとうとしていたときも、亜貴はちゃんと二人の話に相槌を打っていた。 「梢、眠かったでしょ」 「うん、二人にも気づかれてた?」 「ううん。大丈夫。ごめんね、切り上げたかったんだけど」 とにかく、海の準備のために、二人はいつも以上に熱かった。ぽろぽろと歩きながら、亜貴の苦笑に合わせて笑ってしまう。 あのとき、どうして私の手に触れようと思ったのか、聞く勇気はなかった。 「梢、」 「うん?」 影が伸びている。亜貴の影と私と影は、ぴったりと寄り添って歩いていた。現実の私たちは、しっかりとお友達のような距離感を保っている。 あの二人からしても、私たち二人は、スキンシップの少ない恋人に見えているのだろうか。 「うち来たら?」 私の家は、亜貴の家よりも少し遠くに位置している。大学徒歩10分くらいで探した部屋は、利便性よりも広さを重視した。だから、誰よりも、郊外の方に近い。 付き合うことになって、亜貴は毎回私を家まで送ってから、自分の家に戻るようになった。気にしなくていいと言っているのに、亜貴は意外と意固地だったりする。
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