束の間の箱庭

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「あ、イチャイチャ禁止~」 「総司が邪魔してくるからだよ」 「あっくんは基本こずに甘い! そして俺に厳しい!」 「梢は俺の彼女なの」 はいはい、お惚気ありがとう。総司の声がチャイムにかき消された。 楽しそうに笑っている。 幼馴染三人のうち二人が恋人関係になったところで、私たち三人の友情は変わらない。 本当に、そうだろうか。 亜貴と目が合った。どこまでも心配そうな顔をしている。亜貴の表情に、あと何度私は自分の最低を思い知らされてしまうのだろう。その数ができるだけ少なくあればいいと思うくせに、ずっと続いて行くことを切に願っていた。 やる気のなさそうな総司が、ルーズリーフに絵を描いている。もはや教授の話なんて聴く気もなさそうだ。 絵しりとりは、小学生のころからの遊びだった。 総司が当たり前のように私の腕を肘でつついて、ペン先を紙に触れさせるように示す。描かれているのは歪なリンゴマークだ。 誰よりも絵心がない癖に、総司はいつも真ん中を陣取って、私と亜貴の読解能力を成長させてきた。 総司に押し付けられた紙を受け取って、リンゴの横にゴマフアザラシを書いていく。真剣にペンを擦らせているうちに、ふっと影ができた。 「あ、」 「おはよー、梢ちゃん」 「朋ちゃん、おはよ」 当たり前のように私の横に座って、「寝坊しちゃったあ」と笑った。 確かに、朋美(ともみ)のショートヘアは少しうるんでいる。シャワーに入ってから来たのだろう。ふんわりとシャンプーの香りが漂った気がした。
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