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「亜貴、」
「梢が俺の匂いさせて現れたら、総司は動揺するかな」
問う声に、息が止まった。振り返る亜貴が、私を見つめている。
「動揺して、梢のことばっかり考えて、梢の気持ちに気付いたらいいのにね」
どこまでも苦しい瞳がぶつかる。
葛藤の瞳だった。無意識に近づいて、亜貴の頬に触れる。揺れる瞳に私だけが映っていた。
もし、もしも総司が私に揺さぶられたとしたら、朋美は亜貴を好きになってくれるかもしれない。
いつも、私たちは、4人でいるために必死になっている。それなのに、私たちはどこかで――。
「たまにぐちゃぐちゃにしたくなる。そういう自分にぞっとしてる」
私だけに囁いた。亜貴は呟いた瞬間に私の背に腕を回している。
痛いくらいに抱きしめられて、手に持っていたバッグが地面に倒れた。ぼたりと音がする。亜貴はすべてを無視したままに私を抱いていた。
「こずえ」
「うん」
「ごめん、やっぱ、そばにいて」
「……いる」
「うん、嫌だったら、シャンプー、コンビニで買っていこう」
「ううん。ごめん、大丈夫だよ。気にしない。たぶん、そうちゃんも、絶対に、気付かないから」
緩んだ拘束の中で、亜貴の瞳を見つめている。昏い瞳にとらわれたまま、亜貴がもう一度私を呼んだ。
「ごめん、俺、ものすごく梢に依存してる」
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