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夏の奇跡の輝きで
「こず、曲、夏っぽいやつにして」
「なつっぽい?」
総司のオーダーはいつも曖昧で困る。
晴天の夏空はどこまでも高く青めいていて、触れようと手を伸ばしても永遠に触れない奇跡みたいだ。
総司的プレイリストが鳴らされている車内は、総司と朋美の歌い声と笑った音が入れ混じっている。深いグリーンのカバーがかけられた総司の携帯を操作して、適当に次の曲をかけた。
「お、こずナイス」
「本当? 私これくらいしか知らないんだけど……」
総司は飽き性かつ熱中症だから、『俺的最高サマー』というタイトルのプレイリストの曲だけでも、数えきれない。
高校生の時に何度か総司の部屋で聴いた曲だからわかったものの、次に同じオーダーをされたら、迷うことなくシャッフルを押して、神の采配に任せようと思った。
「亜貴くん、もうつく~?」
「ん~、あと10分くらいかな」
「わお! もうちょっとだ~!! 梢ちゃん、楽しみだねえ」
にこにこ笑っている声が後ろから聞こえている。
車を借りて、皆で買い物に行った。準備段階から盛り上がりすぎたらしく、すでに後部座席の二人はチューハイ片手に良い気分になっている。
この調子で海に入ろうとしているのだから不安だ。
亜貴も同じことを考えているのかもしれない。苦笑した瞳と目が合って同じように笑った。
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