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「来月のシフト、亜貴の誕生日の2日前くらいから合わせよ~」
「うん、わかった。でもバレそうだけど……」
「梢、総司? 二人とも何話してるの?」
ぎょっとして、繋がれていたままの手が離れた。
繋いでいた意味も、放した意味もない。
振り返って、亜貴と朋美がこちらを見つめているのを見たら、総司があっさりと「昔話~」と嘘を吐いた。
「え、なになに? 梢ちゃんの昔話、興味ある!」
「よし、じゃあ夜話そうぜ。眠れると思うなよ~! とくにこず!」
「え? 私?」
「赤チャンこずも、ウトウト禁止だかんな」
「そうちゃん、もう酔っ払ってるでしょ?」
「全然いける。ほら、早く戻って海で泳ご」
何事もなかったかのように立ち上がった。
総司と一瞬視線が絡んで、小さく笑ってしまう。とりあえず、私をここに連れ出したわけはわかった。
二人で亜貴のプレゼントの作戦会議をする時間を作りたかったのだろう。総司らしいやり方だった。
立ち上がった総司が、当たり前みたいに先陣を切って階段を上がっていく。
「上まで競争、よーいどん!」
勝手にスタートを切った総司の後ろ姿を、朋美が追いかけている。清々しい夏にふさわしいきらめきに、笑い声が漏れた。
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