夏の奇跡の輝きで

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「だめだ~!! ともちゃんの水着、似合いすぎていて直視できない」 浮かれ騒ぐ総司に同じように笑えてくる。 総司の言う通り、手足の長い、うっとりするようなプロポーションの朋美は、黒の大胆なビキニがばっちり似合っている。 まるで朋美のために誂えた衣服みたいに違和感がない。 調子よく朋美がポージングをとるたびに、総司が「うわ~!!」と叫んでいる。すでに酔っ払いのテンションのような気もしなくもないけれど、総司は見た目に反して酒豪だから、本人としては素面と変わらないのだと思う。 ブルーにへんてこな絵が描かれた独特な海パンを履いている総司は、のっけから朋美の笑いのスイッチを入れていた。定期的に笑いの波が来るらしい朋美がゲラゲラと笑って、総司の肩を叩いている。 「いて、いてて、やめて! DV反対!」 「ひ、もう、はは、笑いすぎてお腹痛い……」 「こず、助けて」 怯えたような顔を作った総司が私の方へ来て、子犬みたいに腕に抱き着いてくる。まるで亜貴から逃げるときと同じポーズだ。 もう何年も昔の記憶が過ってついに吹き出してしまった。 海水浴場は、さすがに夏らしく混みあっている。チューハイ片手に笑っている二人は、かなり治安が悪く見える。苦笑して、海の家に水を買いに行った亜貴の後ろ姿を眺めた。
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