夏の奇跡の輝きで

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「きゃっ」 飛沫がきらきらと視界に舞った。 振り返った総司が、ぽかんとしてから、ゆるゆると口角をあげる。そのスローモーションの中で海底に座り込んで、襲い掛かる水にしとどに濡れる。 「うわあー……」 遠くで、盛大に転んだ私を見た朋美が、笑っている声が聞こえている気がする。 「はは、こず、ははっ、べっちゃべちゃ」 「誰のせいで……!」 「ごめんごめん、ほら、手掴んで、な?」 けらけら笑ったまま、無傷の総司が手を差し伸べる。 小学生の夏、市民プールで総司に思い切り背中を押された記憶がよみがえった。あれをやられてわんわん泣いたのを覚えている。 もちろん総司は亜貴に怒られた。 やさしい、うつくしい、消えない記憶だ。 総司の手を掴んで、力を入れる。 私を起き上がらせるべく、ぐっと引き上げようとしている腕を逆に引き込んだら、目を丸くした総司があっけなく倒れてくる。 総司と一緒にいると、私はどこまでも幼くなる気がする。 「うわっ」 引き込んだのは間違いだったと気づいても、倒れたあとでは遅い。 私を巻き込んで倒れてきた総司は、当然私の上に乗って、盛大な飛沫をあげた。噴水みたいな世界の中で、茫然と見つめ合ってから、小さく吹き出している。
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