夏の奇跡の輝きで

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「こず、おま、お前、自分も水かかってんじゃん」 「ふふ、だって、そうちゃん、すっごい成長してるんだもん」 「デカくもなるわ、はは、もう、ぐっしょぐしょ」 「ああ、もう、そうちゃん重たい」 「こずのせいで襲ってるみたいになったじゃんか」 「きゃあ~」 「ふは、なにふざけてんだよ~」 「ふふ、そうちゃんもたまに朋ちゃんに怒られちゃえ」 「梢」 けらけら笑う音が止まった気がした。 総司が顔を引きつらせている。だいたい二人で悪だくみをしているときは似たような声がかかるから、その相手が誰なのか、振り返らなくてもわかってしまった。 「梢、風邪ひくよ」 「亜貴……?」 振り返って、タオルを持った亜貴が、こちらを見つめている視線に絡まった。 総司がさっと立ち上がる。ちらりと見つめたら、私から目をそらして「朋ちゃんとこ行って来よ~」と呟いていた。 助ける気はないらしい。 亜貴はにっこりと笑っている。機嫌が悪いときのサインだから、理由もわからないままにもう一度名前を呼んだ。 「亜貴?」 「うん、立てる?」 空いている手で、私に差し伸べてくる。 総司の手よりも大きい。亜貴の指先に触れたら、邪な遊びを考える間もなく力を込められて、亜貴のほうに引き寄せられた。 ぐっと力を入れられるままに立ち上がって、抱き込むように亜貴にタオルを掛けられる。
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