束の間の箱庭

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私を介してひらひらと手を振り合った二人がにっこりと笑った。「一年おめでと~」と言いあってから、朋美が「梢ちゃんと亜貴くんもおめでとう」と呟いた。 何も言えないまま、亜貴が「ありがとう」と呟いたのを聞いている。 笑っているだけで精いっぱいだった。どうしてこんなにもむごいことばかりが起こるのか、私にはわからない。 「梢ちゃん、今日の予定は?」 「ともちゃん俺と同じこと聞くじゃん」 「え? まじかあ! 気が合う」 一年前の今日、亜貴と私は彼氏と彼女になった。 亜貴を見つめて、自嘲しそうな唇を咎めている。亜貴は私を愛していない。 あの日、打ち上げ花火が視界一杯に散らばった時、私と亜貴は、互いのかなしい愛のために、嘘を吐いた。 「で、で? 今日、花火大会なくなっちゃったし、予定ないなら、4人で宅飲みでもするか~?」 「うーん、俺と梢はもともと違う予定入れてたから、今日は難しいかな。ごめんね。また今度にしようか」 あっさりと断った亜貴が、私の反応を見つめていた。 予定なんて入れていない。1週間前に話していた時は、今年は部屋から花火を観ながらゆっくりしようかと言っていた。 残念そうな顔の二人に笑った。 ごめんね、と同じように呟いて、ノートを取ることに集中しているふりをした。誰一人、咎めたりしなかった。 私の大切な人たち。大切な箱庭。ずっと同じ距離のまま笑っていたい。 なぜ、人は、人を愛するようにつくられているのだろう。
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