夏の奇跡の輝きで

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「風邪ひく」 「あったかいから、大丈夫だよ?」 「梢は海行ったら必ず熱出すでしょ」 何年前の話をしているのだろう。 言いたいのに、亜貴が真剣そうに呟くから、閉口してしまった。もともと自分でもはしゃぎすぎるとよくないことはわかっていたから、海に入るつもりはなかったのだけれど。 「ありがとう」 被せられたタオルを抱いて、亜貴のほうを見る。 すぐ近くで私を見つめている瞳とかち合って、何も言わない亜貴に、首をかしげてみる。 亜貴の指先が、私のむき出しの腕に触れていた。ただそれだけで、音もなく、亜貴の瞳にとらわれて吸い込まれそうな心地になる。 近づきすぎている。 気づいた瞬間に、亜貴の熱がじわりと侵食してくる。動揺する足が、体を一歩後ろに戻した。かすかに足元に波がぶつかった感触がある。 どうして怒っているのか、全然わからない。 熱くなった頭で思考することもできず、逃げるように言葉を吐いた。 「あっ、と……、そうちゃんにも、使ってもらわなきゃ」 遠くから、総司と朋美の声が聞こえている。ちらりと見つめたら、総司もずぶ濡れのまま朋美に笑われていた。私ほどじゃないけれど、総司も意外と熱を出すほうだ。
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