夏の奇跡の輝きで

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「あき、」 「ん」 「私、大丈夫だから」 「だめ」 「亜貴も、だめだよ」 「俺は……、いい」 「ダメ」 誰よりも傷ついている。 この場にいる亜貴だけが、ずっとこころに傷を作ったまま、私たちが私たちであるために必死で笑っている。そのことを思うたびに何度でも苦しくなって、遣る瀬無さでどうにかなってしまいそうになる。 亜貴、ごめんね。私は嘘を吐いている。 苦しくなんてない。例えこの視界の先に、総司と朋美が笑いあっていても、私は苦しくなんてない。 もしも私が苦しむのだとしたら、その光景を見て心の傷を抉り続けている亜貴のかなしみのためだけの苦しみだろう。 亜貴の指先を掴んで、ゆっくりと視界に光彩が戻ってくる。相変わらず眉をゆがめたままの亜貴と目が合った。 もう一度、私から、都合の悪いものを隠すように腰に回った指先に力が込められる。それよりも先に振り返って、その先の光景を見据えた。 「こずえ」 総司と朋美が、一枚のタオルを争うように引っ付いている。どこまでも仲のいいカップルみたいで、眩しさに目がつぶれてしまいそうだった。 私と亜貴だけが、季節に取り残されている。 世界からは、私と亜貴も、総司と朋美のように見えているのだろうか。そうだったらどんなに残酷だろう。 亜貴のくるしい初恋は、どうやって救ってもらえるのだろう。私も亜貴も、あきらめが悪い。
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