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ごめんなさいと何度言ってもゆるされない。もう、ゆるされてはいけないのだと思う。
きっと、罰ならいつか下る。そのとき、私は潔く亜貴から離れられるのだろうか。
「ごめん、そうちゃんは、朋ちゃんの彼氏だもんね」
呟きながら、どうしようもなく儘ならない現実に泣きたくなった。
潮風に目頭が熱くなりそうで、必死にかき消している。
嘘を吐いている。
どうしようもなく、むごい、嘘を吐いている。きらめきの最中で思い出しては、泣き出したくなることを繰り返し続けている。地獄のような幸福の匂いだ。
「もう、二人に近づかないように、気を付ける」
なんてかなしい決意だろう。
きっと、亜貴の胸にも同じものが灯っている。思うだけでかなしくて、打ち消すように、足の爪先を砂浜に押し付けた。焼けるくらいの熱に触れて、整えるように息を吸った。
「だって、皆で一緒に居たい」
亜貴と一緒に居たい。
二人を大切にするというのなら私も大切にする。総司が笑っていればいいと思うし、朋美がはしゃいでいてくれていればいいと思う。
大切にしたいものが多すぎて、何一つ動き出せなくなってしまった。嘘にとらわれて、心が閉じ込められている。ただ好きなだけなのに。
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