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「ふふ、本当に、好きだけじゃ、だめなのかなあ」
呟いたら、亜貴が隣り合った指先に触れた気がした。
そのやさしさひとつで死んでしまいたくなる。もう、こんなに汚い私なら、亜貴に好きになってもらえなくて当然だった。
当たり前だ。ひとり、胸のうちで呟いたら、どうしようもなく真っ黒な胸にわだかまった。泣いてしまいそうだ。
「梢」
「助けてくれてありがとう。たぶん、亜貴が嫉妬した~とか思われてるんだよ」
ごまかすように震える呼吸を繋いでいる。
亜貴を巻き込んでいる。あの日に戻って、自分を引っ叩いてしまいたい。嘘を吐かずに、まっすぐに、亜貴が好きだと言えばよかった。そうして振られてしまった方が良かった。
でも、そうしたら、きっと亜貴の隣には、いられない。
何度も繰り返した壁打ちのような問答に、心底辟易している。
好きなだけじゃだめなのだろう。だから、こんなにも苦しい。
「ごめんね。亜貴は私じゃなくて、朋ちゃんが」
朋ちゃんが好きなのに。
最後まで言いたくない言葉を、遮るようにもう一度呼ばれる。
亜貴のやさしさの声を、私は死ぬまで忘れたくない。ずっと繰り返し覚えていて、果てる瞬間にも大事に抱きしめていたい。
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