夏の奇跡の輝きで

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亜貴の体温は、きっと私の何倍も高い。そう感じているだけなのはわかっているけれど、理屈では証明できない熱があるような気がした。あぐらをかいた亜貴の前に座って、真正面から、まじまじと見つめられる。そこでようやく、亜貴に水着姿を見られているのだと思いだした。 「なに、そんなにへん?」 「梢のこと、邪な目で見てくるやつがいるのが困る」 真面目そうな顔をして、ふざけている。ついさっき、二人で逃げ出そうと言ったとは思えないくらいに茶化されて、自然に顔が笑った。 「いないよそんなの」 「梢は認識が甘いの」 「ふは、亜貴、ほんとお兄ちゃんみたい」 何度も繰り返したような笑い声が二人の間で鳴り響いている。海に来たのに結局二人でいつものように座って話しているのがおかしかった。 くるしい現実から目をそらすために必死になっているだけだったとしても、私はこの日の亜貴のやさしさをずっと大切にする。 「こず、ちがうでしょ」 「ふふ、うん?」 「お兄ちゃんじゃなくて、こずの彼氏」 「へへ、なに、」 呟きながら、残酷な言葉に胸が壊れそうになった。 全部私が悪い。だから、絶対に亜貴に気付かれてはいけない。何度も繰り返した注意を自分自身に打ち込んで、綺麗に笑って見せた。亜貴は私が好きなわけじゃない。
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