夏の奇跡の輝きで

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「好きなだけでいるなら、誰も怒らないよ。誰も傷つかない。亜貴が傷ついたら、今度は私が抱きしめるから」 「だから、亜貴、行っておいで」 偽善のように笑ったら、逡巡した亜貴が、私の頭を撫でてから立ち上がった。 「すぐ戻ってくるよ」 「ふふ、いっぱい遊んでおいで」 「ダメ。女の子一人なんて危ない。なんかあったらすぐ大声出して」 「はぁい」 「梢は声小さいからなあ」 「ふふ、わかったってば。ほら、あ、そうちゃんが呼んでる」 振り返った亜貴が、苦笑している。 自分で首を絞める私の嘘を、亜貴はじっと見つめていた。眉を下げて、不安げな顔をする。 大きな背中を両手で押したら、軽く前に進んだ亜貴が、もう一度「すぐ戻るから、待ってて」と呟いたのが聞こえた。 朋美のもとへと歩いて行く亜貴の後ろ姿を、ただじっと眺めている。 総司と亜貴に挟まれて、大声で笑っている朋美をじっと見つめていた。 亜貴は笑っている。総司も笑っている。目が合った総司が、大きく手を振ってくれていた。返すように手を振って、こみあげる何かは、砂浜の上に捨てた。 よろめいた朋美に、当然のように亜貴が触れる。助け起こしてあげて、何かを囁いていた。亜貴は笑っている。心なしか気恥ずかしそうに微笑んで、朋美に肩を叩かれていた。 スクリーン越しに見る、青春映画のような。 うつくしい光景だった。
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