花火のような恋が砕ける

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衣服や食事にしてもそうだし、バイトに関しても同じだ。困った人がいればすぐに代わるくらい優しいけれど、あのバイト先で何かしらの問題に巻き込まれたとしたら、きっとあっさりとやめてしまうだろう。 そんな亜貴がただ一人、好きになったのが、朋美だった。 亜貴は、初恋なのだと言った。その時、片側だけの私のハートの継ぎ目が、ぼろぼろと崩れる音を聴いた気がした。 そうか、もう、ずっと前から、この片割れが埋まらないことは決まっていたのか。 恐る恐る自分の左胸に触れて、異状なく機能している鼓動に心底安堵した。 「さっき、海でイチャイチャしてるの見たよ」 「うーん?」 「ほら、レジャーシートでさあ、なんかぎゅーってハグしてたじゃん」 「あ、いや……、見られてたの。はずかしい」 違うと言い切れなくて黙った。それを言ったら全部が無駄になる。 亜貴が好きなのは朋美で、朋美のもとへたどり着いた亜貴の表情こそが、何よりも美しい笑顔だった。 私の好きな人をたったの1年で振り向かせて、知らないまま笑っている。朋美の笑顔に胸が苦しんで、勝手に息を吐きだそうとする。堪えて笑って見せた。 「本当に亜貴くんと梢ちゃんはラブラブだよねえ」 「はは、やめて。そうちゃんと朋ちゃんこそ、いっつも仲良しだよ?」
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