花火のような恋が砕ける

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「ほら、ソージに甘い!」 「え? そう? でも、朋ちゃんが幸せそうだから、よかったなあって思ってるの」 だから、私も亜貴も、動き出せないままここでわだかまっている。 切り終わった野菜をボウルに盛り付けて、使った調理器具をたらいの中に入れた。掃除が好きだと言った通りに、朋美が洗い物をしてくれる。優しい笑みに触れて、二人でへらへらしていた。 「梢ちゃんのしあわせが私のしあわせだから」 「ふふ、朋ちゃんこそ、私に甘いよ」 朋美の口癖だった。 何度も言われている。仲良くなって、朋美の部屋でお泊りをしたときにはじめて言われた。一緒に床に敷いた布団の上に寝転がって、くすくす笑いながら映画を見つめていた。 私たちと同じように女の子たちが笑いあいながら「私たちずっと一緒だよね」と頷きあっていた。清々しい青春映画の最中に、朋美は優しく囁いていた。 『梢ちゃんが幸せなら、私も幸せ』 『ずっと一緒が良いな。おばあちゃんになっても、こうやって二人で笑ってたい』 そのやさしい声は、いつまでも私のこころに残っている。大切な友達だ。だから、私も同じ気持ちでいる。 「梢ちゃん、嫌なことがあったら、ぜーったい言ってね」 「朋ちゃん、だいすき」
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