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レイラはブルーシートに包まれ、あとから来た遺体搬送車に運ばれていく。
「ネイハムさん、お話は署で伺います」
警官の1人が、呆然と立ち尽くす僕の肩に手を置いた。いつの間にか手錠まで嵌められている。
あぁ、僕は世間から見た悪だったのか。
悪が犯した罪は二度と戻らない。
狭くて暗くて冷たい部屋の中で、毎日懺悔し、償うことしかできない……。
……いや、そもそも僕は本当に悪だったのか?
「……違う」
「ネイハムさん?」
俯いたまま小さく呟いた僕を不審に思った警官が、僕の顔を覗き込む。
「違う! 僕は悪じゃない!」
警察の手を払い除けて、僕はレイラの元へ走る。
「これは、レイラの願いなんだ! たしかに彼女は美しいまま朽ち果てた! でも、彼女は僕と共にいて幸せだった……幸せなエンディングを迎えたんだ!」
レイラの近くにいた警察官たちが、僕を捕らえて押さえつける。それでも僕は、僕らにとっての悪に抵抗するように叫び続けた。
「その幸せなエンディングを、僕は永遠のものに仕立てあげたんだ! 愛する人の幸せを叶えるのは当然のことだろう!? 一体何が悪いっていうんだ!」
僕が警官に押さえつけられているうちに、レイラは車に乗せられ、遠ざかっていく。
とうとう僕もパトカーに詰め込まれた。
「僕らからしたら、愛し合っている僕らの幸せを奪い、勝手な正義を振りかざして、僕らを引き裂くお前らの方が悪なんだ!」
「……精神鑑定に回せ」
警官の1人が、精神異常者を見るような目で僕を見てそう言った。
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