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レイラと引き離されて、何日経っただろうか?
彼女はもう、焼かれて骨だけになってしまったのだろうか?
考えるだけで涙と吐き気が止まらない。
僕はレイラと引き離されたあと、精神鑑定を受けさせられ、精神病棟の封鎖された部屋に閉じ込められていた。
水も喉を通らない。医者に食料や水分を無理やり口に入れられるが、毎回すぐに吐き戻していた。
見かねた医者は、僕の腕に太い管を繋ぎ、栄養素となる液体を血管に流し込むようになった。
そんな日々の中で、僕は彼女の元へ逝くことを、死ぬことばかりを望んでいた。
「お願いだ……死なせてくれ」
彼女のいない世界など、なんの意味もないのだから。
「死ぬことは許されない。生きて罪を償うんだ」
医者や警官たちは、いつもそう言って僕の願いを一蹴する。
けれど僕には、愛し合っていた僕らの幸福を追い求めたことの何が罪だったのか、理解することができなかった。
むしろ僕には、愛し合う2人を引き離し、僕を牢獄のような冷たい病室に閉じ込めることの方が罪だと思えてならなかった。
ある日、僕は点滴のチューブを抜いて、自分の首に巻きつけた。
トイレのドアノブにチューブの端を縛り、ドアに背をつけて座る。ほんの少しだけ息が苦しくなった。
そのままずり落ちるように寝そべっていくと、僕の重さによってチューブが首を締め付ける。
「ぐ……」
醜い本能が、首にくい込んだチューブを解こうと最期の抵抗を始める。きっと首は血だらけだろう。それでもチューブはどんどんきつくなり、やがて意識が朦朧とし始めた。
……これでいい。これで彼女の元へ逝けるのなら。
彼女を想いながら死ねるなんて、最高に幸せなエンディングじゃあないか……。
「レイラ、僕の愛しい人……もうすぐ、会いに行くよ……」
愛する彼女を想いながら、僕は幸せを噛み締めて、そっと意識を手放した。
[完]
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