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 そんなことを考えながら、どれだけ彼女をみつめてしまったのだろう。  唐突に振り返った彼女と目があって、自分が不躾なことをしていると気がついた。  瞬時に沸きあがった羞恥と申し訳なさに、喉から妙な音が洩れかける。  けれど結局のところ悲鳴も、彼女に頭をさげることすらできなかった。  自分の動揺を見抜いたように、彼女が優しく微笑んだから。  すべてを包み込むような表情の美しさに、ただ、ただ見惚れて。  ふたたび歩きだした彼女が遠ざかって行く姿を、呆然と見送ることしかできなかったのだ。
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