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一.
「こら、集中しろ」
いつも眉間にしわが寄ってしまっている旭先生の声にハッと我に返った。
いけない。集中しなきゃ。
今は用意されたダンスを短い曲に合わせて踊る講義中。この後、成績にも関係する一人ひとりのダンス発表があるからみんな必死に汗を垂らして練習している。
「ほっ、はっ、はぁっ」
こんな風にアレンジしても可愛いかな。
あたしは、田中郁。大手アイドル事務所の研修生で、新しくデビューが決まっている『CANDY×MELODY』のメンバー選別合宿に参加している。
「では、今から一人ずつ発表してもらう」
皺深い先生の一声で、候補生は風の如く一列に並んだ。
1、2、3、4、5、と軍人の点呼が続く。
「では、始め
一番、由良野」
一番最初の由良野 実花からダンスを発表していく。実花は、用意されたダンスをそのままこなしている感じで、アレンジは控えめだった。
順調に発表は終わっていく。原形も留めていないようなものから、アンドロイドのように淡々と用意されたダンスを発表するなど、十人十色だった。
あたしは、12人中11人目。今の講義だと、とても都合がいい。程よいアレンジが出来た(はず)から、印象に残りやすい最後の方はいい成績をもらえるかもしれない。
だけど。
問題は、アイツだ。
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