残されたもの

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「ポメポメぷぱぷぱ、ぱぷぱぷこけこけ?」(この星には生命反応がないのに、この人工的な模様はなんだろうね?)  岩と砂しかない星の上で、足が4本で手が4本あり、目も4つある宇宙人が砂の上に無数に残された不思議な模様を指しながら仲間にたずねていた。 「きゃわきゃわ、きょきょこほひほひ。かきゃかきゃ?」(確かに不思議なもようだ、しかもこの場所にだけ無数にあるんだね。いったいなんなんだろう?)  砂の上の模様は、彼らが調査した場所にだけ存在し、その場所から少し離れると一切発見できなかった。  砂に描かれている模様は楕円形の形をしていた。そして、その楕円形の中には波線が平行に並んでいた。その楕円形模様の間隔は砂の上に点々と並んでいる場所と、模様が重なる場所と、色々な描かれ方をしていた。  そして、その楕円形の模様が残っている場所には、四本の足で支えられた高さ数メートルの大きな機械のような残骸も残されていた。しかし、その機械は何かの発射台に使われたようで、表面は焼け焦げていて既に機械として動いていなかった。 「ぽみょぽみょ!」(あれは何だ!)  楕円形の模様が点々と続いている先には、不思議な棒が地面にささっていた。しかも、その棒の先には不思議な図形が書き込んである標識が付いていた。その図形は、星のマークが50個、横棒が13本描かれていた。 「きゃおきゃおかこかお、ちゃらちゃらけむけむ?」(知的生命体がこの星に残した、何かの認識マーカーではないのか?)  プルプル……  着信を示す振動に気が付いた彼は、通信機の画面を4つの目のうち2つで見る。目が4つもあると周りを警戒しながら通信機も同時に見えるので便利だ。 「きょぼきょぼ、ぶみぶみ。ぶおーん、けろんけろん」(この衛星の主星である、第三惑星の探索チームから連絡だ。どうやら第三惑星で進化した知的生命体が、第三惑星から衛星に進出することを試みたらしい) 「ぐみぐみ、ぽちょぽちょ。ぱみゆぱみゅ。へなはな、はほはほ。ぐりゅんぐりゅん。にゃあにゃあ」(第三惑星には、知的生命体が存在した証拠として地上建造物が残っていたらしい。しかし、既に絶滅してから数万年も経っているのだろう、記録された情報の劣化が激しすぎてほとんど残っていなかった。かろうじて、化学燃料による推進力を利用して惑星の脱出速度を得るロケットの発射映像が残っていたようだ。その映像には彼らが不思議な服を着て二本足でロケットに乗り込むところが移っているよ) 「くにゅんくにゅう、ほへほへ、ぶもぶも」(なるほど、この砂の上にある不思議な模様は、その知的生命体が真空でも活動できる宇宙服を着て、うろうろしていた足跡なんですね) 「ずべずべ、がぼがぼ。ぱむぽむ、しばしば」(第三惑星の知的生命体も、我々が訪れる前に絶滅してしまったのかな。彼らからラブレターをもらったから、こんな銀河の周辺にある恒星まで来たのだがな) 「ぐちゃん、ぐちゃん。かきょかよ……ぷるんおうるん」(ちょっと来るのが遅かったのですかね。彼らの時間間感覚的には100万年ぐらい……結局残っていたのはこの足跡だけでしたね)  彼らが見上げた先には、暗い宇宙空間に浮かぶ青く輝く第三惑星があった。  ★★★  時は、西暦1972年。  NASA(アメリカ航空宇宙局)は、木星探索機パイオニア10号に金属製のプレートを取り付けていた。そのプレートには、人類から外惑星の知的生命体に対するメッセージが刻まれていた。  そして、木星の探索が終わった後、1980年代に太陽系を脱出した。
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