3人が本棚に入れています
本棚に追加
オンライン飲み会
吉田は会社の同僚で親友の木内を気遣っていた。木内の彼女が一週間前から行方不明になってしまったのだ。当然、生気を失った木内を励まそうと吉田は二人だけのオンライン飲み会を開いた。少なくとも酒で悲しむ気持ちや鬼胎する気持ちや危惧する気持ちが紛れると思ったのだ。だが、始まって直ぐに、「もう俺は博美を諦めてる」と木内はぽつりと呟いた。
「何言ってんだ。希望を持てよ」と吉田が言うと、「もういいんだ。博美のことで気を遣ってくれるな」と木内は言った。
博美にぞっこんで彼女の美貌を自慢するように誇らしげに彼女を自分に紹介した時の木内を思い起こした吉田は、そんなに簡単に諦められるものなのかと疑問に思った。反面、心配させまいと無理をしているのではないかとも思った。しかし、存外、木内の気色が暗くないので無理をしている感じではなかった。寧ろ励ますまでもないと思われる程だった。だから酒が進む内に陽気になる木内に対し、吉田は肩透かしを食らった格好となった。しかし、何はともあれ親友が生気を取り戻したのだから喜ぶべきことだと吉田は自分も陽気に行こうと木内と盛り上がっていると、木内の背後に何かもやもやした曖昧模糊たる物が現れたような気がした。最初、酔っている所為かと吉田は思ったが、それが漸次はっきりして来て人の顔らしき物に変わって行くので刮目すると、その顔が傷だらけのお岩さんみたいになるのが見て取れたので慄然として歯をガタガタ震わせながら叫んだ。
「お、おい!木内!後ろに、ば、ば、化け物!」
「はぁ?何言ってんだ?お前、相当酔ってんな」
「い、いや、だってお前の後ろに!後ろに・・・」
「後ろ?まさか背後霊かよ」そんな短い言葉でも呂律が回らないくらい木内は正体なく酔っていたが、後ろに振り向いた途端、「ギャー!」と絶叫した。それはもう一気に酔いが吹っ飛ぶ程の驚愕ぶりで震撼させられたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!