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参加者 パイン
「へぇー、漁師なんですか!
すごいですねー!」
そう言いながら、私は手を小さく叩く。今は深夜帯だから、あんまり大きな声を出すと、隣部屋の人に怒られてしまう。
生まれてからずっと都心で過ごしてきた私にとって、『漁師』という職業は
聞きなれない仕事だった。
私の両親は、互いに教師。そのせいで、昔からだいぶ窮屈な生活をしていた。
しかし、長年の辛抱の甲斐あって、今は両親の元から離れて、アパートで一人暮らしをしている。
そして、大学に行きながら、将来声優になる為に、様々な活動も自発的に
行なっている。
その中の一つが、『ライブ配信』だ。自分の演技を直接見てもらい
アドバイスを貰う事ができるからだ。
通っている大学にも、アドバイスをくれる同志がいる。ただ、最近は滅多に
皆と会えない為、自主トレに没頭していた。
そんな中、非日常的なスリルを楽しめる、アユムさんのオンライン配信は
毎回楽しみにしている。
ゲームや漫画の世界なら、肝試しスポットに行けば、必ず何かしらの
ハプニングがある。
ただ、現実世界の場合はそうでもない。案外、何も起こらずにに終わる事も
しばしば。
でも、幽霊に対してそこまで耐性のない私は、心霊スポットの雰囲気を感じるだけでも、相当な刺激になる。
高校の卒業旅行に、有名なテーマパークへ行き、ノリでお化け屋敷に入った。だが、私は数分も経たずにギブアップ。
『テーマパーク』という夢心地に胸躍らされた結果、真逆の世界へ堕ちた。
今では笑い話だが、ちょっとした黒歴史と化してしまった。
「じゃあ次は、『パイン』さんだね」
「はいっ!
パインでーす。声優目指して頑張ってまーす。」
「おぉ、凄いな! 声優さん志望か!」
私がノートパソコンの前で手を振ると、コメント欄が「かわいー!」や
「声綺麗!」という類のコメントで埋め尽くされる。
アユムさんの配信も毎回楽しみにしているけど、私自身もネットで活動をする事で、自分のモチベーションを上げている。
・・・まぁ、アンチコメされて、上がらない場合もあるけど。まぁボーッと
過ごすよりはマシだと思う。
それくらい私は、夢に向かって真剣な事もアピールしたいし。
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