参加者 ビートル

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参加者 ビートル

「じゃあ3人目の方、自己紹介お願いしまーす」 「はい、えー・・・  ビートルです、ドライブが趣味です。」 俺は若い頃から、ドライブが好きだった。特に、真夜中に走る一本道が 何よりも好きだ。 たった一人だけで進む道は、自分にしか進めない道に見えて、特別感が増す。 それに真夜中だと、道路を歩く通行人がいないから、それほど路肩に気を 使わなくてもいい。 休日にドライブに行く時もあるのだが、親子連れが道路を半分塞いでいる事もあって、休日に外出するのは、できるだけ避けている。 俺は仕事の都合上、平日に休みを貰える事が多い。平日なら人通りも少ない。 そして、深夜帯のドライブを満喫している最中に、心霊スポットを通過する事も多々ある。心霊スポットというのは、自然が多い場所にあるからだ。 山中にひっそりと佇む神社だったり、不気味な空気が漂う公園だったり。俺は昔から臆病な事もあって、そうゆう場所には近づかないようにしている。 ただ、この前たまたま見たアユムさんの配信を見て、今まで忌み嫌っていた 心霊スポットの概念が、少し変わったのだ。 心霊スポットというのは、静かで落ち着いている場所が多い。元々賑やかな 場所があまり好きではなかった俺としては、理想的な場所だった。 学生時代、友人にカラオケやゲームセンターに誘われた事もあったが、正直 ああゆう『賑やかな事がウリ』の場所は、居るだけで耳が痛くなるから、毎回断っていた。 逆に、静かな公園でキャッチボールなどを誘われた時には、喜んで行った。 公園の草原でバク転したり、今はもう馴染みがないけど、竹とんぼを自作 して、誰がどこまで飛ばせるか競争したり。 心霊スポットは、そんな俺の好みにベストヒットな場所だった。アユムさんの配信は、幽霊とかよりも、静かな場所での撮影に興味を惹かれたのだ。 見ているだけで心が落ち着くし、作業しながら聴ける。世間で流行っている『ASMR』みたいな感覚だ。 実際、そんな感覚でアユムさんの配信を見ている人も珍しくはない。それに 心霊スポットというのは名ばかりで、実際には何も起こらない場合が多い。 あったとしても、妙な音が時々聞こえるかくらいだ。
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