草餅 2

1/1
前へ
/7ページ
次へ

草餅 2

草餅 「えー、今回の肝試しスポットは此処! 紅馬神社(こうまじんじゃ)です!  見た目はねー・・・  あー、やっぱり真夜中に見る神社って怖いわ・・・。  それにしても寒いなー!   やっぱりまだ雪が溶けていないくらいだもんなー。」 アユムさんは、体を震わせながら海岸を歩く。夜中だから波打ち際などは見えないけど、音で大体わかる。 今回アユムさんが向かったのは、国内では有名な心霊スポット、紅馬神社。 そこの神社での体験談や目撃談は、よくネットにアップされている。 主に、『得体の知れない存在がいた』という体験が多い。その正体が 果たして幽霊なのか、妖怪の類なのかは、まだ分からない。 それに紅馬神社は、立地の都合上、海が荒れている時には近づけない。 だから、心霊スポットとしては有名だけど、肝試しに来る人は少ないのだ。 アユムさんはザクザクと砂浜を踏み締め、冷たい夜風を全身に受ける。 アユムさんの髪は、四方八方に跳ね回っていた。 最近は俺も、寒さのせいで漁が辛い。手や耳が悴むし、船の上だと風の強さも桁違い。 そのせいで船も相当揺れるから、この時期にはベテラン漁師でも酔う。 今も若干頭が揺れている錯覚に陥る、これもある意味『職業病』かも。 「・・・あ、ありましたね。此処が紅馬神社です。  うわぁー・・・。手入れされていないのか、瓦とか柱には苔が生えてます。  障子はだいぶ綺麗ですけど、それもそれでまた不気味だなー・・・」 「俺の家の近所にも、漁の無事などを祈願する祠があるんですけど、そこより  も汚いな。  鳥居とかはありますか?」 「えーっと・・・  あるけど・・・もう朽ちて原型留めてないなー・・・」 神社がライブの画面上に表示されると、コメントも津波の様に押し寄せる。 「こっわ」 「マジであったのか・・・」 「今回こそ何か起こる事に期待」 など、皆が胸躍らせながら、アユムさんの配信を見守っていた。しかし オンラインでその状況を見ている俺達の顔は、一斉に青くなった。 特にパインさんは、唇を強くに噛み締めている。必死に恐怖を堪えていた。 やっぱりリアルな心霊スポットの現場には、言い表せない程の『恐怖』と 『好奇心』が入り混じり、感情が麻痺してしまう現象が起きてしまう。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加