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草餅 2
草餅
「えー、今回の肝試しスポットは此処! 紅馬神社(こうまじんじゃ)です!
見た目はねー・・・
あー、やっぱり真夜中に見る神社って怖いわ・・・。
それにしても寒いなー!
やっぱりまだ雪が溶けていないくらいだもんなー。」
アユムさんは、体を震わせながら海岸を歩く。夜中だから波打ち際などは見えないけど、音で大体わかる。
今回アユムさんが向かったのは、国内では有名な心霊スポット、紅馬神社。
そこの神社での体験談や目撃談は、よくネットにアップされている。
主に、『得体の知れない存在がいた』という体験が多い。その正体が
果たして幽霊なのか、妖怪の類なのかは、まだ分からない。
それに紅馬神社は、立地の都合上、海が荒れている時には近づけない。
だから、心霊スポットとしては有名だけど、肝試しに来る人は少ないのだ。
アユムさんはザクザクと砂浜を踏み締め、冷たい夜風を全身に受ける。
アユムさんの髪は、四方八方に跳ね回っていた。
最近は俺も、寒さのせいで漁が辛い。手や耳が悴むし、船の上だと風の強さも桁違い。
そのせいで船も相当揺れるから、この時期にはベテラン漁師でも酔う。
今も若干頭が揺れている錯覚に陥る、これもある意味『職業病』かも。
「・・・あ、ありましたね。此処が紅馬神社です。
うわぁー・・・。手入れされていないのか、瓦とか柱には苔が生えてます。
障子はだいぶ綺麗ですけど、それもそれでまた不気味だなー・・・」
「俺の家の近所にも、漁の無事などを祈願する祠があるんですけど、そこより
も汚いな。
鳥居とかはありますか?」
「えーっと・・・
あるけど・・・もう朽ちて原型留めてないなー・・・」
神社がライブの画面上に表示されると、コメントも津波の様に押し寄せる。
「こっわ」 「マジであったのか・・・」 「今回こそ何か起こる事に期待」
など、皆が胸躍らせながら、アユムさんの配信を見守っていた。しかし
オンラインでその状況を見ている俺達の顔は、一斉に青くなった。
特にパインさんは、唇を強くに噛み締めている。必死に恐怖を堪えていた。
やっぱりリアルな心霊スポットの現場には、言い表せない程の『恐怖』と
『好奇心』が入り混じり、感情が麻痺してしまう現象が起きてしまう。
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