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パイン 2
やっぱり、画面越しでも心霊スポットの威圧感は消えない。軽減はしていると思うけど、それでもやっぱり、この非日常的な空気感には抗えない。
私はアユムさんが投稿している過去の動画もいくつか見ているのだが、何回か見ないと慣れない。
慣れたとしても、聞き流している最中にビクッとなってしまう事もしばしば。
ただ、生放送をオンラインで見るのは、今回が初めてだ。心霊スポットは日本にいくつもあるけど、何故か似た様な場所がないのが、奇妙でしかない。
心霊スポットに関する逸話には、類似する話がいくつもあるにも関わらず
地域独自の風習だったり、季節によっても、その雰囲気や外観が異なる。
ある意味、世界中の昔話と同じなのかもしれない。
外国の童話であっても、日本昔話とよく似た話があるくらいだから。ただ
国柄などによって、内容は似ているけど雰囲気が異なる、そんな感覚だ。
「パインさん、大丈夫?」
「すみません、生放送で心霊スポットを見たのは今日が初めてで・・・」
「普段、心霊スポットとか行かないの?」
「はい、極力その周辺も近づかないようにしているので・・・」
私の青ざめた様子を見た皆が、私を心配してくれる。中には
「じゃあ何で抽選に参加したの?」なんてコメントも見受けられるけど、実際に見ているこっちの身も考えてもらいたい。
アユムさんはズカズカと進んでいるけど、私としては、その場にいないにも
関わらず、身動きが取れない状況に陥っている。
他のオンライン視聴者の2人は、興味津々でアユムさんの配信画面を見ているけど、私は顔に手を当て、指の隙間からじゃないと画面を見る事ができない。
神社の周りには、案の定ゴミが多く、まだ冬が終わっていない事もあって、虫は全然いない様子。
だが、肝心なのは、霊的な現象だ。もう配信が開始されて1時間以上が
経過しようとしているが、ラップ音なども聞こえない。
心霊スポットを散策する配信者はアユムさん以外にも大勢いるが、アユムさんの動画の特徴としては、不思議と霊的な現象が起きない。
だから、ホラー初心者の私でも、気兼ねなく視聴する事ができる。その証拠に、さっきまでおっかなびっくりだった私でも、すっかり元気になっていた。
オンライン視聴者の2人と色々と意見を言い合ったり、調べて欲しい場所を
アユムさんに伝えたり。オンライン肝試しは、わざわざ大勢で行かなくても
一人で調べれば済む事もメリットの一つである。
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