9.利害が一致するとかしないとか

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 頭を振ったせいでアルコールが急激に回って、グラリと身体が傾いた。 「おっと」  それを片手で支えてくださってから、「――だから辞める、とか言いませんよね?」と低めた声音で問いかけられる。 「辞めたくは……ないです。だって辞めちゃったら、鬼上司のしごきに耐えた日々が無駄になって悔しいですもん」  そう。  せっかくこの1週間、死ぬ気で頑張ったのに。  来週からだって、〝織田(おりた)課長〟の理不尽な要求に負けないつもりで立ち向かう気満々だったのに。  苦手な同年代の同期の男の子達とだって、少しずつ馴染む努力をしようって思っていたのよ?  辞めたいわけないじゃないですか。 「誰が鬼上司ですか」  吐息まじりに言われて、そう言えばこの人がその鬼上司でしたっけ、と思って可笑しくなる。  あー、これ。思ったよりお酒、回ってるかも。  ビールはともかく、初っ端のブランデーがきいたかな。
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