9.利害が一致するとかしないとか

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*** 「さっきカフェでどのくらい僕と母の会話を聞きましたか?」  不意に話を変えられた気がしてキョトンとしたら、 「誤魔化さず、単刀直入に話しましょう。僕は今、母から結婚を急かされて参っています」  溜め息まじりにじっと見つめられて、私は彼のアンニュイな雰囲気を漂わせる色気に、ソワソワしてしまう。  その空気に耐えきれなくて、マグを置いてさっき取り上げられたグラスに残ったビールを一気に煽って。  それでも足りなくてキョロキョロと視線を彷徨(さまよ)わせたら、 「お酒に逃げずに真面目に向き合ってもらえませんかね?」  そう言われて、再度グラスを取り上げられてしまった。  でも、だからと言って、そんな宗親(むねちか)さんに返せる言葉は「はぁ」ぐらいしか思い付けなくて。 「気のない返事ですね」  当然のように即座に苦笑されてしまって、「……すみません」と謝る。  そうしてみたところで、じゃあどんな反応をするのが正解なのか分からないまま。 「春凪(はな)は僕の恋人だという自覚はありますか?」  言うなり距離をグイッと詰められて、私は思わず彼から距離を取るように仰け反った。  結果、期せずしてソファに押し倒されたみたいになってしまう。
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