9.利害が一致するとかしないとか

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「そっ、それはっ。仮初(かりそめ)の設定だったじゃないですかっ」  慌てて視線を逸らしながらそう言い募ったら、「母にもそれを疑われているみたいでしてね」と苦笑される。 「えっ!?」  それは初耳です。  だって葉月さん、そんなこと一言もっ。  そこで私が席を外していた間におふたりの雰囲気がどことなくおかしくなっていたことをふと思い出して、あの時、かな?とハッとする。 「春凪(はな)がコーヒーを買いに行ってくれている間に聞かれました。本当にあの子と結婚する気があるのか?とね。もしそのつもりがないのなら、すぐにでも別れて見合いしなさいと――」  何だかよくは分からないけれど、宗親(むねちか)さんはどこかの会社の社長のご子息で、今の勤め先には社会勉強の一環として出ているみたい。  彼が家業を継ぐためには伴侶を(めと)って身を固めることが、父親との間で取り決められた唯一無二の絶対条件なんだとか。  家庭も持てないような人間には会社も任せられないというのがその理由らしい。  うちの両親も大概前時代的だけれど、宗親(むねちか)さんの親御さんも似たり寄ったりだな、と思ってしまった。
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