9.利害が一致するとかしないとか

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***  一瞬彼が何を言っているのか分からなくて、私は宗親(むねちか)さんに組み敷かれたまま、フリーズしてしまう。 「え、あ、あの……っ」  一応声を出してみたものの、全く意味をなさない言葉が溢れるばかり。 「実はね、こんなこともあろうかと婚姻届は既に用意してあるんです」  あっさり私の上から身体を離すと、宗親(むねちか)さんがリビングの一画にある作り付け棚の引き出しから、一葉の紙片を取り出した。  小豆色で書かれたA3サイズを2つ折りにしているらしいそれは、ドラマやアニメの中でしか見たことのない書類で。 「そっ、そんなのっ」  慌ててソファーに起き上がってフルフルと震える指で宗親(むねちか)さんが手にした書類を指差したら、 「あ、シンプルなものはお嫌いでしたか?」  ポンッと手を打って、ご安心くださいとニヤリと微笑む。  そういう意味ではっ!と言いたいのに声が出ない私を置き去りに、宗親(むねちか)さんがプレゼンでもするみたいに続けるの。
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