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「基本的には従順だけど、僕が間違ったことをした時には自分の意見を臆さずはっきり言える。そんなキミは、僕にとって理想的で好都合な奥さんです。そう簡単に手放す気はありません」
それは喜んでいいのでしょうか?
それとも失礼な!って怒らなきゃいけないでしょうか?
色々突っ込みたいことは満載だけれど、とりあえず1番伝えたいことを優先する。
「あ、あの……例えばなんですけど……お役所に書類は出さずに同居する形で結婚のふりだけするというのはどうでしょう?」
どうしても私と〝夫婦という体裁〟を取りたいなら、それで十分なんじゃないかしら?
それならばお互い何の傷も負わずにいざと言うときにはサラリとさよなら出来るはずだし。
そう思ったのだけれど――。
「春凪の親御さんはそんなにぬるい人たちですか?」
宗親さんに、掴まれたままの手に力を込められた私は、そわそわと瞳を揺らす。
「――少なくともうちの親はそんなに甘くありません」
言われて、至極もっともな言い分に力なく萎れた私の元気を取り戻したいみたいに、「まぁでも――」と私の座るスツールをクルリと回すと、宗親さんが私を正面から見つめてにっこり笑った。
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