10.アレもコレも布石

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「話しているうちにまた泣き出してしまった春凪(はな)をなだめすかしてやっと寝かしつけたんです。そっとしておいてもらえますか?」  そんな声が扉の向こうから聞こえてくる。  宗親(むねちか)さんの指示のもと、〝疲れて眠ってしまった〟という小芝居をさせられている私は、葉月さんに嘘寝(うそね)をしている顔を覗き込まれなくて良かったとホッと胸を撫で下ろして。  布団の中、扉一枚隔てた向こう側の会話を一言一句漏らさずに聴かねばと聞き耳を立てていた私は、宗親(むねちか)さんの牽制(けんせい)に安心してほんの少し肩の力を抜く。  宗親(むねちか)さんからはもしもの場合に備えて布団を目元まで引き寄せて寝そべっておくように指示を受けていたけれど、それにしたって、覗き込まれたら(まぶた)がピクピクしてしまったかも知れない。  私は宗親(むねちか)さんほど(きも)が据わっていないし、そもそも嘘だってつき慣れていない。  もしもを思うと気が気じゃなかったの。  僕も出来るだけフォローはしますので、という彼の言葉を信じていなかったわけではないけれど、さすがです、と閉ざされた扉を見つめながら密かに感謝する。
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