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「――な、……はな、春凪」
ユサユサと肩を揺さぶられながら名前を呼ばれて、私はまどろみから浮上するようにゆっくりとまぶたを上げる。
それと同時、この世のものとは思えないぐらいハンサムなお顔が自分を覗き込んでいるのに気がついて、思わず息が止まりそうになった。
「ひゃっ。お、織田課長!?」
何故課長がうちに!?と言いかけて、彼の背後に広がる見慣れない天井に視線を向けた私は、一気に目を覚ました。
――ち、違うっ。彼の家に、私がお邪魔してるんだった!
「ごっ、ごめんなさいっ。宗親さんっ」
緊張のあまり眠りこけてしまって、ここを〝我が家〟だと錯覚してしまった。
寝ぼけた頭で、宗親さんのことを会社モードで「織田課長」と呼んでしまったのも、今更のようで何だか恥ずかしい。
今日は宗親さん、作業服姿じゃないのに、何でこんな失態やらかしちゃったかな、私。
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