11.だったら試してみればいい

2/27

2302人が本棚に入れています
本棚に追加
/720ページ
 はっきり言って、私の事情なんかよりここの家主である宗親(むねちか)さんが、快適に過ごせないようなことになってはいけないと思って。  ――宗親(むねちか)さんは私がいても眠れちゃったりしますか?  さして深い考えもなくそう問いかけた私に、彼はニコッと極上の笑顔を向けると、 「気になりますか? だったら試してみればいい」  とおっしゃって。  私は一瞬何を言われたのか分からなくて、思考が停止してしまう。 「――え? あの……?」  ややしてキョトンとした顔でベッドの上から宗親(むねちか)さんを見上げたら、 「今夜はやはり泊まって行きなさい、春凪(はな)。それで、眠れるかどうか、お互いに確認してみましょう」  真顔でそんなことを提案されて、びっくりしてしまった。 「帰るとしたら、春凪(はな)は代行タクシーで車ごと自宅に戻るか、普通のタクシーで帰宅した春凪(はな)を追って、僕が後からキミの車を送り届けてから、再度ここへタクシーで戻るかしないといけません。――だけどそれって、ものすごく無駄な経費かなって」  そこで一瞬だけフッと笑うと、 「最初僕はそういうつもりでいたんですけど、倹約家の春凪(はな)ならそんな勿体無いことしてはいけませんって怒るかな?と思いまして……。どうですか? 僕の読み、当たってますか?」  な、何ですかっ。  そのご主人様に褒めてもらうのを待っている、忠実な大型犬みたいなキュンとくる眼差し!  パンチ力ありすぎてクラッと来たじゃないですかー!(涙目)  こ、これって私を立てるみたいな言い方をなさってますけど、ある種の脅しですよね?
/720ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2302人が本棚に入れています
本棚に追加