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「ひ、ぁ……っ」
何、いまのっ! 何、いまのっ!
私、こんなの知らないっ。
思わず吐息まじりに漏れた、鼻に掛かったような甘えた声が、自分のものだなんて信じたくない。
だって私、元カレからはずっと「春凪は不感症だ」って言われ続けてきたんだよ?
心地よさに意識が持っていかれそうになるとか、有り得ないっ!
いま、身体全体が熱を帯びたように熱いのは、不可解な事態に戸惑っているだけ。
宗親さんがキスをほどくと、どちらのものとも分からない唾液が2人の間をトロリと繋いで途切れた。
「春凪、すごく色っぽい」
私の口の端を濡らしたそれをスッと指の腹で拭うようにして唇に再度触れると、指先を口の隙間にやんわりと差し入れながら宗親さんが問いかけてくる。
「……気持ち良かったですか?」
その視線が、いつもの冷静さを欠いて、どこか熱を宿して見えるのは気のせい……だよ、ね?
「気、持ちよく……な、んかっ」
慌てて否定した声音が変に上擦って、まるで言葉とは裏腹、「気持ち良かったです」って言ってるみたいに聞こえた私は、恥ずかしさに目端を潤ませて視線を伏せた。
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