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「春凪は僕の婚約者ですよね? 僕はこう見えて義理堅い方なので、約束した相手以外とはそういうことを出来なくなる性分なんです。――ここまで言えば僕が何を言いたいか、お分かり頂けますよね?」
さっきは「お願い」とか殊勝なことを言ってきたくせに、舌の根も乾かないうちにどこか勝ち誇ったような顔でそう言って私を脅してくるとか、相変わらずいい性格していらっしゃいますね?
要するに「私としか出来ないんだから、大人しく抱かせろよ」ってことですよね?
――顔は天使みたいに整っているくせに、中身は何て悪魔みたいに自分勝手な人!
そう思ったけれど、確かに宗親さんが言うように、(渋々とは言え)さっき私、この人との婚姻届に署名捺印をしてしまった。
まだお役所には提出していないから今のところ何の効力も発揮していないただの紙切れではあるのだけれど、宗親さんのことを伴侶にすると意思表示をしてしまったことに変わりはないんだと思う。
政略結婚と明言されている私たちの関係には、きっと甘い甘い恋人としての期間なんて夢見るだけ野暮なシロモノだ。
だとしたら、諸々すっ飛ばして〝こういういこと〟になるのだって、もしかしたら想定の範囲内?
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