14.接点なんていくらでも作れるはずなんだ

7/11

2302人が本棚に入れています
本棚に追加
/720ページ
 カラン……と、氷がグラスに落とされる乾いた音と、トクトクトク……という琥珀色のトロリとした液体が注がれる音。  その液体を浴びた途端、グラスの中の氷が微かに(きし)むような音を立てた。  僕と明智(あけち)のふたりしかいないからだろう。  店内はしんと静まり返っていて、日頃聞こえないような微かな音までみんな拾ってしまうんだ。  まぁ、店をやってない日に無理矢理連絡して開けさせて……こんな風に図々しくも飲ませてもらってる身だ。ウィスキーを1杯奢るのなんてお安い御用だ。 「別に全部僕の奢りで構わないから、遠慮せず何杯でも飲めばいいですよ」  言いながら、 「まぁ、迷惑料とか(ここ)に来てくれなくなるかも知れないとか……。全くの杞憂(きゆう)だと思いますけどね。僕の勘ですけど、ああいうタイプの子は、あまり冒険をしないものです。だから滅多なことじゃ、行きつけの店、変えたりしないと思います」  うだうだ言う明智(あけち)に、不安要素なんてひとつもないでしょう?と僕は反論を試みた。
/720ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2302人が本棚に入れています
本棚に追加