2304人が本棚に入れています
本棚に追加
/720ページ
***
「金曜日、引っ越し業者が春凪のアパートに来るよう手配しました。キミは仕事をお休みして対応するように」
シャワーから出ていらっしゃるや否や、有給も何もない私にそんなことを言ってくる宗親さんは、鬼だと思って。
そもそもいつそんな手筈を整えていらしたのですか、宗親さん!
私がお風呂に入っている間ですか!?
昨今、大抵のことは何だってスマホひとつあれば、ネットからアレコレ出来てしまうから、きっとそうに違いないの。
「で、でもっ」
社会人になりたてほやほやの身で、私事のために仕事をサボるとかどうなの?という気持ちを込めて反論を試みる。
「でももしかしもありません。時間がないのだと言うことを自覚して下さい。そもそも社会人としてどうのこうの考えているんだとしたら、最初から受けた着信への折り返しを疎かにしなければ良かっただけのことです。そう思いませんか?」
冷ややかな視線を向けられて、私はグッと言葉に詰まった。
最初のコメントを投稿しよう!