15. タワーマンションの住人になりました!?

11/14

2305人が本棚に入れています
本棚に追加
/720ページ
 何、宗親(むねちか)さん、エスパーか何かですか?  心を読まれたみたいな上に、おっしゃる通り過ぎて、私、ぐうの()も出ません。  とはいえ、私が不動産屋や実家へ折り返し出来なかった責任の一端は、死ぬほど私をこき使って疲れさせた宗親(むねちか)さんにもある気がするのです。  そんなことを思ったけれど、言ったら最後、何億倍にも膨らんだお小言が返ってきそうで、口が裂けても言えっこないの。 「あの……私がお休みしても……、その……」 「ひょっとして業務に支障が出ないか?とか気にして下さっていますか?」  そこで小さく溜め息をつくと、宗親(むねちか)さんが、どこか熱のこもった目で私をじっと見つめていらして。 「正直、僕はキミをとても頼りにしていますし、もちろん出ないはずがありません。恐らくは、僕に思いっきり皺寄せが来るでしょうね。――けど、安心して? 春凪(はな)。……そこはまぁ、甘んじて受け入れるつもりでいますから」 (あ、あのっ、宗親(むねちか)さんっ。お言葉ですが、そこは〝夫〟というより〝上司として〟の方が正しい選択肢な気がするのですっ)  その言い方は、私たちはのだと言い聞かせられているようで、何となく引っかかったけれど、とても口を挟めるような雰囲気じゃなかったの。  だって、宗親(むねちか)さん。口元は柔らかな笑みをたたえているくせに、視線だけはやたら鋭くて。  言外に「僕も協力するんですから、春凪(はな)に拒否権はありませんよ?」と含められているのが有り有りと(うかが)えるんだもん。  私はしんなりと(しお)れながら、「分かりました。ご迷惑をお掛けしてすみません」とうなずいた。
/720ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2305人が本棚に入れています
本棚に追加