16.例えキミがどんなにダメだと言っても

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***  そんな難攻不落にも思える春凪(はな)だけど、実は僕と暮らすことに関しては、結構肝を()えて考えてくれているのかな?と思える出来事があった。 ***  引っ越しの荷物に対して、「もし捨てたあとで必要になっても、また新しいのを買い直せば良い」と何気なく提案した僕に、物凄い剣幕で「あるもので間に合いそうなら買いません! 手放すのは本当に不要なものだけです!」って啖呵を切るような口調で言って僕を睨んで、「厳選するから待って欲しい」と付け加えたんだ。  ――なのに、春凪(はな)。何でこんなに断捨離(だんしゃり)でもしたみたいに色々手放す結論に達したんですか?  春凪(はな)が、「これだけマンションに持ち込みます。他はリサイクルショップへ」と指さした品々を見て、僕は正直言葉を失ったんだ。  だって――彼女が残したのは可愛らしいドレッサーと、春凪(はな)らしい色合いのパソコンラックとハート型のラグ、それから身の回りの服飾品だけ。  食器類なんかも、毎日愛用しているという茶碗とお気に入りらしいマグカップ、それから使い勝手がよくてヘビロテしていたといういくつかの食器以外はみんな処分する対象にしていたんだから。  就職を機に車を買うと決めた際、手にするであろう初任給を当て込んで通帳をほぼ空っぽにしてしまったという武勇伝?を酔いどれた春凪(はな)から聞かされた時にも、僕はその豪胆(ごうたん)とも言える綱渡りっぷりに驚かされたけど……何ていうのかな、これ。
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