17.わけも分からないままトントン拍子?

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 実際にはきっと、宗親(むねちか)さんとバーで初めて出会った瞬間から、私は彼に心を奪われていたんだと思う。  見た目も声も好みの。  だけど、腹黒で自分勝手で強引でわがままな、近付き難い上司。  私とは住む世界が違う人だから、いくら好みのタイプでも好きになったりしない。好きになったりしちゃいけない。  遠くから、姿を眺めるだけで十分の雲上人。  そう自分に言い聞かせていた時点で、私の負けはとっくに決まっていたんだよね。  そんな好みの相手から――例え利害の上とは言え、「妻に」と請われて突っぱね続けることができるほど、チョロ子の私は強くなかっただけ。  宗親(むねちか)さんの私へのこだわりと、私の彼への執着は種類が違うもので、交わることはないというのはもちろん百も承知。  だって、宗親(むねちか)さんのそれは都合の良い妻役を逃すまいとする事務的な固執で、私のこれは紛れもなく恋慕なんだもの。  重なりっこない。
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