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それでも宗親さんは仕事の出来る男性だから、きっと偽装とは言えいざ結婚したとなれば、婚姻相手の私に「愛されているという錯覚」を与えてくれるはずだ。
先の夜がそうだったみたいに。
現に私、宗親さんの腕の中で元カレ相手では得られなかった快感と幸福感に包まれた。
ちゃんと最後まで抱かれたわけでもないのにアレ。
本当の意味で一線を越えてしまったら私、どうなってしまうんだろう。
どんなに深く愛されているように感じさせられても、彼にとっての私はあくまでも利用すべき相手であって、恋愛対象じゃない。
それをしっかり自覚しておかないと、私ひとり気持ちが暴走しちゃいそうで怖い。
だからこそ私、自分の気持ちにふたをする決心を鈍らせたくなくて、引っ越しの際、背水の陣でこの同居に臨んだの。
私だってあんなにたくさんのものを手放すことに不安がなかったわけじゃない。
だけど――。
ああでもしないと宗親さんと一緒にいる理由を〝彼のことを愛してしまったから〟以外の理由で、自分の中にこじつけられなくなりそうで怖かったんだもの。
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