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何もかもを手放した私は、ここを追い出されたら露頭に迷ってしまう。
困るように自分で自分を追い詰めた。
それを、彼の元にしがみ付く言い訳にできるように。
結婚すれば妻以外を抱くつもりはないと言ってくださった宗親さんの言葉に、恐らく嘘偽りはない。
けど、宗親さんが契約上の妻として、私に操立てをしてくださっているだけなのを、自分への愛情だと錯覚することがないようにしないと、きっと宗親さんに呆れられてしまうと思うの。
それを忘れてしまったら、私、夢から醒めた時、絶対に惨めになるから。
――宗親さんのお芝居に縋ってしまいたいと思う気持ちをどれだけ制御出来るか。
それこそが、この偽装結婚での〝肝〟なんだと思う。
――私は偽装夫の織田宗親さんを本心から愛していながらも、そんな事はないと宗親さんを騙しながら偽装妻を演じなければいけない。
本気になってしまったと悟られたら、多分全てがご破産になってしまう。
そう思うから――。
私は渋々宗親さんに振り回されている体で、今日も彼に付き従っています。
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