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うちの実家は日本海に面した、小さな商業都市で。
宗親さんは先の宣言通り、私を海に連れて行って下さった後、その足でうちの実家へと足を伸ばす計画を立てた。
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「春凪、こんな素敵なお相手がいらしたんなら、もっと早く紹介しなさいよ」
宗親さんを見るなり、真っ赤な顔してお母さんが慌てたように横髪に何度も手櫛をかける。
これは緊張したときにやる、お母さんの癖だ。
宗親さんを前に、明らかにお母さんが高揚している代わりみたいに、お父さんはムスッと苦虫を噛み潰したような顔で、宗親さんを睨みつけている。
「母さんは少し黙っていなさい」
とうとう堪えかねたようにお父さんがお母さんをピシリと叱りつけると、お母さんがビクッとして口を閉ざした。
うちの両親はいつもこんな感じだ。
お父さんが絶対君主で、お母さんはその奴隷か配下のよう。
私と楽しく談笑していても、お父さんが不機嫌そうに咳払いをしただけで、お母さんは水を打ったように黙り込んでしまう。
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